レンズのその先に【完】
『どし、て…』
どうして、忘れていたんだろう?
どうして、忘れてしまったんだろう。
どうして、すぐに思い出せなかったんだろう。
「就職はこっちにした」
『なんで、教えてくれ、なかったの…?』
「カエがあの会社希望してること知ってたから、カエが社会人になってからでいいと思って」
あたしへ向けられた声は、紛れも無く彼の声で。
あたしの頭をゆっくりと撫で続ける手は、紛れも無い彼の手で。