レンズのその先に【完】
「度が入ってないならソレ貸してくれない?」
『はぁ…』
「んじゃ、貸して」
『…あっ』
いつの間にか外されていた眼鏡。
持って行かれた方を見ると、あたしと並行して歩くスーツを着た男の顔に、ソレは収まっていた。
『ちょ、…か、返してください!』
慌てて男の顔に手を伸ばすが、あっさりと逸らされてしまう。
「さっき返事したよね?明日の予定は?」
『は?…え、特には…』
「じゃあ明日の午後2時、あそこのカフェに来て。あ、この本は貸してあげる。明日この眼鏡と交換ね」