愛しキミへ、この歌を
どうやら校舎裏から聞こえてくるようだ。
B棟の校舎裏は
桜の木や草などが無造作に植えられていて、土から毛虫が顔を出している。
濃い土の匂いに顔をしかめながらも先に進むと、木がぽつぽつと減ってきて初めてその音は誰かの歌声だと気づいた。
声の主はすぐに見つかった。
一辺2mほどの正方形のアスファルトの地面が土に埋もれるようにある。
そこに長谷川がいた。
汚れているだろう地面を気にすることもなく制服姿であぐらを掻いている。
細い指がギターの弦を器用に押さえる。