愛しキミへ、この歌を
歌い終わったことを示すように最後にギターをジャーンとならす。
そして少し照れたように笑う。
その笑顔は俺には眩しすぎてまた胸が痛んだ。
そのあとはお互い何をするでもなく葉の間から降ってくるセミの声に耳を傾けたり、木漏れ日をじっと見る。
俺にとっては不思議な体験だ。
ほぼ初対面の他人と――しかも女の子――二人きりでいる。
普段ならそれだけでも充分緊張するというのにもう5分ぐらいの沈黙が続いているのだ。
それなのになぜか俺は変な居心地の良さを感じていた。