愛しキミへ、この歌を

彼女が音楽を好きなのは十分に伝わってくる―――俺は彼女が音楽を聞いているか、ギターを弾く姿しか見かけたことがない。廊下を歩くところや、教室にいるところをちらっと見ると彼女の耳にはいつもスカイブルーのイヤフォンが輝いていた。―――そこまで音楽が好きならなおさら、自分の作曲したものに歌詞をつけたいと思うのは当たり前ではないだろうか。
早くこの曲を完成させたいと思わないのだろうか。
もし俺なら―――。



強い風が俺を咎めるように髪をさらう。
楽譜が飛びそうになって少し慌てた。



もし俺なら、なんだ?

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