愛しキミへ、この歌を
気持ちいい。
こんなに歌うのいつぶりだっけ?
一曲まるまる歌い終わる。
俺は小さくほっと息をついた。
その直後。
パチパチパチ。
突然に背後から音がして、思わず肩がびくっと震える。
振り向くとななめ後ろの席に女の子が座っていて、俺に向かって手を叩いていた。
彼女は目が合うとニーッと口角をあげ俺に笑いかける。
女の子にしては短い髪がボーイッシュな印象。
彼女は頬づえをつきながら凛とした声でこう言った。
「キミ、いい声してるね」