誰かが奏でる旋律(ストーリー)【短編集】

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私は花である。


名前はまだない。


一応、学名はありますが、所謂、固有名詞というものはありません。


皆さんにはそれぞれ名前があって羨ましいです。


最近はペットブームらしく、犬さんや猫さんにも名前があるらしく、植物界は大変遺憾です。


私にもポチとかタマでもいいので名前をつけてもらえませんか?


私と同じ花は他にも一杯ありますが、私という存在は世界でたった一つなのです。


固有の名前がなければ呼ばれた時にお返事もできません。


そんなの寂し過ぎます。


それは、皆さんにも言えることじゃありませんか?


なのに私は名前がない………シクシク


すみません、愚痴りました。


愚痴ついでに、少し昔話をしていいですか?


そんな嫌そうな顔をしないでくださいよ。お時間は取らせませんから。


そう、あれは私がまだ種から少し成長した頃でした………


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