誰かが奏でる旋律(ストーリー)【短編集】

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 ある夕暮れ時、ケータイが鳴った。

 久しぶりのアイツからの電話だった。


「もしもし」

『よぉ、元気か? 相棒』

「そっちこそ! 今、何やってんだよ? 上京したって連絡もらったきり、全然、音沙汰ないから、くたばったんじゃないかって思ったぜ」

『相変わらず口が悪いぜ……まっ、ちょっと忙しくてな………』


 久しぶりに聞いた親友の声。

 すげぇ、嬉しいはずだったのに……何でだろう。

 コイツの弱々しい声を聞いてると……

 すげぇ、嫌な予感がする。


「お前、今、何やってんの?」


 返事がすぐに帰ってこない。不安が募る俺。

 もう一度、訊こうとした矢先、親友が返してきた。


『以前……俺らが一年のとき、サッカー部で顧問やってた奴いたじゃん』

「桐原か?」

『あぁ、そいつ……そいつとこの前、偶然バッタリ出会ってな。すげぇなお前、ホントにプロ入りしたんだ』

「よせよ。マイナーチームだぜ? テレビの話題にもなりゃしねぇ」

『それでもすげぇって……おめでとう』

「お、おう……」


 コイツから祝われると妙に照れ臭くなる。

 てか、コイツ、まだ俺の質問に答えてねぇ……


「お前は……どうなんだよ」

『………俺、もうダメかもしれない』

「! どういうことだよ、それ!?」

『なぁ、助けてくれ! 追われてるんだ!』


 お、追われてる!?

 どういうことだ、それ!?


「お、お前、それどういう意味……いや、それはいい!今どこにいるんだよ!?」

『×××通りの○○○港のところだ!』


 あんな人気のないところで何やってんだコイツは!


「頼む! 早く来て───」


 プ─────


 俺達を裂くように切れた電話が耳に障った。
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