誰かが奏でる旋律(ストーリー)【短編集】
 目的地に辿り着いて俺は、愕然とした。

 アイツが傷だらけになって、ボロ雑巾のように倒れていたから………


「おい! 大丈夫かよ!?」

「よぉ、相棒……」


 俺が駆け寄ると、血だらけの懐かしい顔で笑いやがった……

 全然……変わってないんだな………


「どうしたんだよ!? 誰にやられた!?」

「へへ………そんなのどうでもいいじゃねぇか……それより、お前に謝らなきゃならないことがあってな」

「喋るな! 今、救急車を呼ぶから!」


 ケータイを取り出した俺の手を、コイツは止めて、また喋べり始めた。

 くそっ!喋るなってんのに!


「悪いな……お前との約束守れないけどよ………今日、お前が…………ここに来てくれて、俺、今すげぇ嬉しいよ」

「お前、こんな時に何言ってやがる! いいから黙ってろ!」


 俺はコイツの手を振りほどいて119に連絡。救急車を呼んだ。

 電話を切っても落ち着かない…………コイツ、震えてんのか?

 出血がひでぇ! 刺されたのか!?

 くそっ! 止血しなきゃ!

 俺は来ているジャケットで、コイツの腹をきつく縛る。痛いだろうが我慢しやがれ!

 あと俺にできること……………ちっ、ガラじゃないが、コイツの手でも握ってやるか!

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