誰かが奏でる旋律(ストーリー)【短編集】

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 小さいときの“夢”ぇ?

 進路希望用紙を前に頭を捻らしまくっていた俺に、彼女が不意にそう訊いてきやがった。

「そーそー!あるでしょ?野球選手とか、警察官とか!」

 幼稚園、小学生の「大きくなったら何になりたい?」アンケートで、上位五位には入りそうな例だな。

「ねぇ?そんな小さいときの“夢”って何だった?」

 過去形かよ?

「えっ?もしかして、小さいときの“夢”って、現在進行形?」

 まぁな。

「なになに?」

 あまり公言したくないな。恐らく少数派だろうから。

「いいから言ってよぉ!」

 黙ってても良かったが、しつこく迫られそうなので、包み隠さず言った。
 ちなみに笑われる覚悟はできていない。

「へぇ〜、なんか意外!」

 こちらもそのリアクションは意外だ!

「だったら○×大学は?」

 それは考えた。でも、却下だ。

「なんで?」

 県外は駄目なんだよ。

 お前と別れることになるから………。

 こればかりは公言できないけどな。


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