レインブルー
俺は苛立ちを募らせていた。
涼子の誘いに乗ったくせに、しつこく七瀬先生の携帯電話を鳴らし続けるあの男の未練たらしいところといったらありゃしない。
同僚としてただ心配をしているのかもしれないが、プロポーズを断られた身分でよく顔向けできるなと思った。
放っておいてくれたらこっちも都合がいいのに。
何かと邪魔な男だ。
俺は苛立ちをおさえるようにして壁にもたれて大きく息を吐いた。
人生は本当に思い通りにはいかないのだと痛感する。
ここにくるまでなにもかも順調だと思っていたのがまるで嘘のように問題は次々とやってきた。
特に涼子と斎藤のことは予想外だった。
まさかそういうことになっているとは思いもよらなかった。
つい一時間前のことが脳裏を過ぎる。
ーー涼子は狂ってるよ。
あの後、涼子は家を出ていったきり戻っていない。
隣の家の二階は涼子の部屋だ。
まだ明かりは点いていなかった。
俺が吐き捨てた言葉に涼子の傷付いた顔が今もなお目に焼き付いている。
「言い過ぎたかな…」
後悔の波が激しく押し寄せてきたものの、今の俺にはどうしていいか分からなかった。