レインブルー

インターホンを押して、ガムを口の中へ放り込む。

しかし何度押しても出てくる気配は感じられない。


「あれ、おっかしいな…」


リビングの明かりは点いていたから、てっきりいるかと思っていたが。

俺は吐息をついて項垂れた。

せっかくここまで来たが留守なら仕方ねえ。

まあそう焦って話することじゃねえか。

また日を改めて来ることにしよう。

諦めて道端に停めていた自転車に跨ると隣の家が目に入った。

黒井の家と比べて少し広いその家の表札は篠田とある。

この間見た現場が脳裏を過ぎる。

篠田涼子は俺が見ていたことに気付いていたようだが、たいして驚きもせず斎藤と唇を交わしていた。

やっぱり篠田は斎藤とデキているのだろうか。

黒井の様子がおかしいこともそのことが原因なのか。

そもそも黒井は篠田のことが好きなのか。

もしかしたらそれは俺の単なる思い違いかもしれねえ。

だけどそれはそれでいいとしても、じゃあなんであの時七瀬先生の名前が出たんだ。

あの話の流れで七瀬先生の名前が出るのは明らかに不自然だ。

もしかして七瀬先生が休んでいるのもそのことと関係があるのだろうか。

それは一体、どんな風に?
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