レインブルー
じゃあな、と俺は黒井の家を後にした。
少し離れたところに自転車を停めて振り返ると、黒井と篠田が一緒に家の中へ入るのが見えた。
「ンだよ。篠田は入れて、俺はだめなのかよ」
ーーでもお前犬嫌いじゃなかったけ。
ーーあ…。
あの時、黒井の表情が強張ったのを俺は見逃さなかった。
ーー今親出かけてて、あたしもさっきまで用事があったからクロに面倒見てもらってたの。
今親が出かけているはずの篠田の家はリビングの明かりが点いている。
あいつらは、明らかに嘘をついていた。
ふたりで何かを隠しているんだ。
白いハイヒール。
煙草の匂い。
そして二階から聞こえた奇妙な音。
見上げたその家の二階の窓は青いカーテンで閉められている。
それらの中にメッセージが隠されているような気がしてならなかった。