レインブルー
「クロ、それ…」
胸ポケットにしまっていたそれは、七瀬先生がずっと身につけていた指輪だ。
銀色に輝く光はいつまでも色褪せないでいる。
もうこれは彼女に必要ない。
今、彼女の薬指はさらに洗練されたダイヤモンドの光で輝いていた。
「涼子」
俺は言った。
「これでよかったよな」
それはまるで自分に言い聞かせるように。
「俺はこれでよかったよ。七瀬先生が一番幸せそうだから」
しばらくの間が空いて、涼子は小さく頷いた。
「そうだね」
好きな人が幸せであればいい。
例え、自分のそばにいなくても。
そんな風に思えるのはきっと簡単なことじゃない。
でも俺たちは
今はただ心から
そう思える日を待つしかないんだ。