レインブルー

「クロ、それ…」


胸ポケットにしまっていたそれは、七瀬先生がずっと身につけていた指輪だ。

銀色に輝く光はいつまでも色褪せないでいる。

もうこれは彼女に必要ない。

今、彼女の薬指はさらに洗練されたダイヤモンドの光で輝いていた。


「涼子」


俺は言った。


「これでよかったよな」


それはまるで自分に言い聞かせるように。


「俺はこれでよかったよ。七瀬先生が一番幸せそうだから」


しばらくの間が空いて、涼子は小さく頷いた。


「そうだね」








好きな人が幸せであればいい。



例え、自分のそばにいなくても。




そんな風に思えるのはきっと簡単なことじゃない。



でも俺たちは





今はただ心から


そう思える日を待つしかないんだ。





< 155 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop