レインブルー
「それは詭弁だよ」
カチッとライターの火をつけると同時に灰色の煙が立ち上り、煙草の香りが鼻先を過ぎった。
「所詮人間は自分が一番かわいいんだ。手に入れたかったら力ずくにでも手に入れればいい。少なくとも俺はそうしてたね。邪魔者は消してた」
黒縁眼鏡を押し上げて薄く笑みを浮かべる彼の目は笑っていない。
ゆっくりと伝うその手は白いシーツを纏っていたあたしの身体を露わにしていき、あらゆるところに優しいキスが降り注ぐ。
「もっとも君はもう俺のものだけどね」
鏡の向こうで、彼はにたり、と妖しく笑った。
あたしは永遠に籠の中から出られない。
あなたという籠の中から
ずっと。
完