レインブルー
それから呆然と座り込んでいたら七瀬先生が寝返りを打った。
びっくりしたあたしは先生の名前を呼ぶ。
先生は起きなかったけれどあたしはある異変に気付いた。
何だろう。
この匂い。
どこかで嗅いだことのある匂い。
アルコール?
「七瀬先生は酔いつぶれて寝てるだけだよ」
振り返るといつの間にかクロが横に腰掛けていた。
「大体事故って言ってもかすり程度だから。だから大丈夫って言ったろ」
クロの言葉にあたしは
気が抜けた。
と同時に安堵のため息が漏れた。
「そういうことは最初にいってよ。心臓に悪いじゃない」
ごめん、とクロは白い歯を零した。
「相当飲んだみたいでさあれから時間が立つのに全く起きないんだ」
「七瀬先生でも酔っ払うことってあるんだね」
「たぶんなんか嫌なことでもあったんじゃない」
「何だろう。その嫌なことって」
「さあ」
「…藤木先生と何かあったとか」
クロは黙り込んでしまった。
あたしも自分でいって落ち込んだ。
たぶん、というよりそれが原因なんだろうとなんとなく分かっていたからだ。
だって七瀬先生の薬指にあの指輪がない。
いつも肌身離さず持っていたのに藤木先生とお揃いのあの指輪は忽然と姿を消してしまっていた。