レインブルー
「ねえ、涼子」
「なあに、クロ」
「このまま七瀬先生が目を覚まさなかったらどうなるんだろう」
「やだ、クロ。縁起でもないこと言わないでよ」
「このまま七瀬先生は藤木先生と結婚しないでずっと俺のそばにいて一緒にいられるのかな」
クロはずっと何かを考えている顔だった。
どきどき。
どきどき。
何でだろう。
鼓動がどんどん大きくなっていくのは。
目の前にいるクロがクロじゃないように感じるのは。
あたしの手がどんどん汗で滲んでいく。
丸っこい黒い瞳があたしを捕らえた。
「涼子も藤木先生のそばにいられるかもよ」
それはまるで悪魔の囁きのように聞こえた。
あたしはこの前クロが言っていた言葉を思い出した。
「先生を自分のものにできたらって思ったことある?」
その問いにあたしは好きならそんな事何度だって思ってる、と頷いた。
また、悪魔の囁き。
「ねえ、涼子。俺どうしたらいい?」