レインブルー


「今はまだ生徒たちのことを考えていたいの。武も知ってるでしょ?私がどうして高校の保健医になったか」

「知ってるよ。子どもの居場所を作ることが純子の夢なんだろ」

「そう。怪我をした子どもだけじゃなくて心に傷を追った子どももみんなが安心できる場所を作りたいの。それが今の保健室なのよ」

「純子のそういう生徒想いなところは俺はすごいと思うよ。でも今話しているのは俺と純子のこれからのことだろ。生徒のことが結婚しない理由に関係あるの?」

「あるよ」

「なに?」

「武、前に言ってたよね。結婚するときは仕事辞めてほしいって」


武は今思い出したかのようにああ、と相づちを打った。


「言ったよ。落ちついてからだって仕事はまたできるじゃないか。夢を叶えることだってそれからでもできる」

「私は今、仕事をしたいの。結婚なんかよりも」


言ってしまってから私は後悔した。

武の透き通ったブラウンの瞳に悲しみが刻まれている。

それを隠すために無理矢理笑顔を見せるのが武の傷付いた証拠だ。
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