レインブルー
「だからあなたの部屋にはサーフィンボードがあるんだね」
俺は耳を疑った。
小さくだけれど、扉の向こうで先生の声が聞こえたから。
無性に嬉しくなって俺はそれからも話を続けた。
「天井に吊してあるのは昔死んだ親父にもらったボードなんです。今はぼろぼろで使えないけど大事な宝物」
また、七瀬先生の声。
「そう。いいお父さんだったんだ」
俺は思わず綻んだ。
「どうかな。しょっちゅう海に出てて家族のことはほったらかしだったから。でも親父のおかげでサーフィンに出逢えたわけだし今では感謝してます」
今度は返事がなかった。
心配になって扉を小さくノックすると、やっと先生の声が返ってきた。
「そう思えるのは幸せなことだよ」