真夏の深海魚
太陽
ベッドの上で、僕はユカの瞳を見ていた。
その吸い込まれそうな瞳の表面がまるで海面のように波打っているように見えた。
そのずっと奥の方には、やはり暗くはてしない深海が存在しているのだろうか。
「僕と付き合ってくれないかな。」
「それは、あなたの彼女になるってこと?」
「そうだよ。だめかな。」
「だめよ。私はあなたのものにはならないわ。私は誰とも付き合わないの。」
あっさりフラれてしまった。
着替えてから部屋を出るときに、僕はユカに五万円を渡そうとしたが、彼女はいらないと言った。
また会ってくれるかと聞いてきたので、もちろんだと答えた。
すると、彼女は携帯電話の番号をメモした紙を僕にくれ、またねと言いながら小走りで行ってしまった。
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