あいつの犬〈短編〉
なんという屈辱。負けず嫌いなあたしにとって、こいつに従う事がどれだけ悔しいか。
「 じゃあ、最初は… 」
さっ、早速ですか。
晴の事だから、すごいお願いをしてきそうなんだけど……
「 キスして 」
「 ………はい!? 」
「 なんでも言う事を聞く、犬なんでしょ? 」
「 な、何言ってんの…?あはは、冗談やめてよ… 」
この部屋の中で笑っているのはあたしだけ。
こいつは全く冗談を言ってるような顔じゃないし、むしろいつもの無表情。
………晴、本気で言ってんの?