また君に恋をする




今にでも雨が降りそうな泣き空。
雨雲が刻々と覆い迫る。
夜の街に光をもたらすのは月ではなく
店のイルミネーション。


「仁。」


女と手を繋ぎ歩く仁。
その前を引き攣った顔で立ちふさぐ那智。                   
   

「仁。その人 誰なん?」


涙を溜めた瞳。
真っ直ぐと仁を見つめる。
   

「彼女だよ。彼女。」


悪ぶれもせず隣いる女の肩を抱く仁。
溢れ出る涙で
視界がぼやける。
   

「何?妬いてるの?」   


俯く那智の姿に
口角をあげ笑う仁。
   



「最低。」




震える声。
たった一言口にするのが精一杯の那智。
頬をつたい落ちる涙。
感情が抑えられず手を振りかざす。        
覚悟を決め目瞑る仁。
   

「…。」   


いつまでたっても痛みが頬を染めない。
恐る恐る顔をあげる仁。
手を宙にあげたまま顔を涙に濡らす那智の姿。
   

「仁を殴るときっとうち後悔すると思う。それにうちの手のほうが痛なる。」


切なそうな瞳で仁を見つめる那智。
   


「今までありがとう。」



グショグショに濡れた顔で最後に仁へと微笑む。




< 2 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop