また君に恋をする
「…。」
一瞬止まる時間。
「そういうことだったのか。」
震える拳。
「何のこと。」
やっとことで口開く那智。
「俺と別れた理由。」
那智につめよる仁。
「仁。何か勘違いしてひんか?」
仁と那智の間を割って入る章大。
「那智との間にやましいことなんてあらへんで。」
「お前には聞いてねぇよ。」
章大の胸倉を掴み殴りつける。
地面に倒れる章大。
「やめてや。」
叫ぶ那智。
顔を上げる章大。
唇から流れる血をぬぐう。
「仁。冷静に話しようや。」
立ち上がる章大。
「何をだよ。話すことなんてねぇよ。」
怒鳴りちらす仁。
「何を勘違いしてんねん。那智との間に何かあると思っとるなら大間違いや。見ろよ。那智が怖がってるやろ?」
那智に目を向ける仁。
「…。」
不安を隠しきれない瞳。
目には涙が溢れ頬を濡らしていく。
「…。」
動揺する瞳。
言葉を失う仁。
「那智。今日はもう帰れや。」
通りかかったタクシーを止めると強引に那智をタクシーに乗せる。
「せやけど。」
震えた瞳に震えた声。
「帰れ言うてんねん。大丈夫や。」
扉を強引に閉める章大。
走り去るタクシー。