また君に恋をする



狭い玄関に並ぶ靴。
オレンジ色の明かり。
隆平の手を離さない博貴。
   
「すぐ帰ってくるから。ええ子で待っててや。」

博貴の視線に合わせしゃがみこむ隆平。
   

「やや。」


首を振り駄々をこねる。
   
「俺等がおるやん。せやからええやろう?」
   
「忠たんは嫌や。」

困った顔の忠義。
   

「博貴。我侭言う子はお兄ちゃん嫌いやで。」
   
「う~やや~。ややも~ん。」


泣き出す博貴。
   

「泣くなや。男の子やろ?」
   
「うわあああああ~ん。」


忠義の言葉に余計に涙を流し声をあげて泣く博貴。
   
「博貴。いつもはこんなんちゃうやん。」
   
「う~。」
   
「寂しいんやもんな。隆平がおらな不安なんやもんな。」

博貴の頭をなでる章大。
   

「せやけどお兄ちゃん困ってるで。博貴があまりにも泣くから。ちょっとだけやん。すぐ帰ってくるって。」


博貴の涙を拭う章大。
   

「僕と忠義と博貴、三人やったら寂しくないやろ?三人でお兄ちゃん帰って来るの待ってような?」


頷く博貴。
     


「さすが猛獣使い。」



章大のあやし方にポツリと呟く忠義。
   

「兄たん。ほんまにすぐ帰って来るん?」
   
「すぐ帰って来る。約束や。」


博貴に小指を差し出す。
   


「やくちょく。」




隆平の小指に小さな自分の小指を絡める。
   

「ほな。行ってくるわ。頼むで。」


博貴の頭をなでる隆平。
玄関を後にする隆平。






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