また君に恋をする




暖かな日差し。
雲一つない青空。
崖から見える穏やかな海。
花束を抱えた立ちすくむ隆平。
首にはシルバーのネックレス。
   
「好きやろ?この花。」

崖下の海へと投げ落とす。
白い小さな花が円を描くように落ちていく。
   
「久しぶりやな。俺、ちゃんとお兄ちゃんやれてるやろか?」

両手を見つめる隆平。
博貴の首を絞めようとする光景が蘇る。
   

「あかんよな…。俺…。」


拳を握り締める。
   



「お前と…お前と同じくらい博貴のこと愛しとるはずやのに…。憎くて憎くてどうしょもないんや…。」




その場に倒れこむように座る。
   

「何でなん?何でお前は死んでん…。博貴残して…。俺は良かっん。例え愛されなくてもお前が傍にいるだけで…。ただそれだけで…。」

淡々と壊れたように離し続ける隆平。
   

「博貴の父親になるつもりやってんで…。俺の子やなくても。血なんか繋がってなくても。そんなことどうでも良かってん。…せやのに…。」


俯いていた顔を海へと向ける。
   


「せやのにお前は母親になることよりも女でいることを選んでんな。…俺だけやなく博貴まで残して…。ほんまにアホやわ。…いっそうのこと博貴が俺の子やったらどんなに楽か…。」



自然と涙が頬をつたう。
ネックレスを握り締める隆平。
   



「お前にはわかんねぇだろうな。こんな惨めさ。」




力なく立ち上がる。
   

「ほな。行くわ。博貴のやつ。待っとるから。」


海に背を向け歩き出す。
   



「俺が…俺が博貴の兄貴になった理由はお前があいつを愛してたからや。せやから父親にはなれひんかってん。」



ボソりと呟く隆平。
おぼつかない足取りでその場を後にする。





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