恋愛教師
「せぇんせいっ♪」
相変わらずチャラだか・・・。
なんなんだか・・・。
泰嘉があたしのもとへ寄ってくる。
あたしは、泰嘉への思いを悟られないよう、
懸命に演技をしなくてはならない。
「泰嘉。何ですか?」
誰もいない放課後の教室。
普通の生徒同士だったら
キスでもするのかなぁ・・・。
「先生、あした水辺公園に来てくれねぇ?」
「どうして?」
「ちょっとね。」
明日は土曜日。
あたしが顧問の男子テニス部の練習も丁度休みだった。
しかし、生徒と教師が休日に公園で会っているところでも見られたら
大変なことになる。
泰嘉はもてるし、誰かが見たら即噂になるに違いない。
「ごめんなさい。明日は部活があるの。」
「なんで嘘付くわけ?」
「は?」
「テニス部の野郎から聞いたけどなぁ♪明日は休みだって。」
「はぁ・・・。」
泰嘉に友達が多いことを思い出し、
大きなため息をついた。
「生徒と教師が休日に会うって、どんなことか分かってるの?」
「しぃらねっ♪」
「罪なことに決まってるでしょ。」
「いいじゃん、俺、先生がくびになっても守る自身あるぜっ?」
「駄目なものはダメ!」
「ちっ。つまんねぇ」
「ふぅ・・・。」
あたしは安心のため息をつく。
本当は、休日まで泰嘉に会えるなんてすっごく嬉しいよ。
でもね。生徒と教師の関係を越えちゃいけないんだよ。
そういうこと、泰嘉にも分かって欲しいな。
泰嘉だってモテモテなんだから
あたしなんかよりもっともっと可愛い女子と付き合った方が
幸せになれるよ。
「んじゃぁねっ♪」
泰嘉はスクールバックを肩に担ぎ
教室を出て行った。