其の名はT・Y
この「デビル」の失踪は数ヶ月前にまで遡る。

もともと私はこの「デビル」の乗組員としての訓練を受けていた。

が、処女航海の前日、「デビル」は姿を消したのだ。私を、それに他の乗組員候補も乗せることなく。

後日、それが日本の軍人による独断、いわばクーデターに近いものだったということを聞いた。

実は「ディープデビル」は我が国の技術のみで作られているわけではない。

そこには極秘裏に「日本」の技術が導入されていた。

これは軍部においても上層部の人間と、「デビル」捜索に携わる者しか知りえない事実ではあるが

初めてそれを聞いた時、私は耳を疑ったものだ。

「核」「原子力」この言葉に極端なまでに拒否反応を起こす国、日本。

もちろんそれ相応の歴史的背景があってこそではあるのだが、その日本が原潜の開発に関わっているという言葉、

にわかには信じ難いものがあった。

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