其の名はT・Y
現在「デビル」は我が艦より前方数キロのところに位置し、黙していた。

最新鋭の潜水艦とはいえ、エンジンを停止している状態からの急制動は困難である。

当然こちらの位置もあちらに露呈していると言う前提においても、やはり先制攻撃が妥当かと思われた。

しかしながら、艦内にはクルーと艦長の声が響く。

無理もない、そういう「戦場での常識」をあの艦は今日に至るまでことごとく打ち破って進んでいるのだから。

「しかし艦長!デビルと我が艦ではあまりにも性能が違いすぎます!」

「ならばこのままヤツが日本の領海に入るのを指を咥えて見ていろというのか!」

「い、いいじゃないですか、日本の連中が日本の協力で作った艦でですよ…向こうの不祥事だ!」

「いやしかし!それでは世界最強の我が国が日本に依存して、あまつさえ出し抜かれたという事実が!」

「ファルコンもオルカも、あのレックスも沈められたんですよ!我々の艦がどうこうできる相手じゃない!」

「それでも!」

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