其の名はＴ・Ｙ

艦長が一際大きな声をあげたその時だった。

上官達のやり取りを聞きながらも前をむいていた私の眼に映ったのは通信を示すランプの点灯。

しかし反射的にそれをとった私のヘッドホンに聞こえてきたのは信じられない声だった。

「か、艦長……」

「なんだ！本部からか！」

「いえ、違います、これは……デビルからの通信です！」

「なんだと！命乞い…いや、宣戦布告か？！スピーカーに回せ！」

「しかし…」

私は艦長の命令を聞いても、すぐに対応することは出来なかった。

なぜなら、その通信は本当に信じられないことを言っていたからだ。

おそらくそれは「デビル」の通信兵と思しき男の声。

<<こちらディープデビル！現在何者かの襲撃を受けている！！>>

<<そこの潜水艦、頼む、助けてくれ！>>

<<な、なんだこいつは！人間じゃない！！>>

そして、ぐっ、というくぐもった声を最後にその男の声が聞こえなくなっていた。