其の名はT・Y
しかし私が躊躇した本当の理由はその通信ではなかった。

数秒後、聞こえて来た別の男の、まったく緊迫感のない声に私は固まっていたのだ。

<<あのー、シードッグのクルーの方、聞こえてらっしゃいますか?>>

「どうしたマイケル、早くしろ!」

「あ……はい、了解しました」

私ははっとして、とりあえず判断を保留したまま音声の出力を自分のヘッドホンから艦内のスピーカーへと切り替えた。


<<あーあー、あ、どうも、私ただいまディープデビルの艦内におります山田と申します>>

「……?誰だコイツは?向こうの通信兵か?艦長はたしか海江…」

艦長の言葉を遮るように通信が響く。

<<本当はお一人ずつ名刺をお渡ししたいのですけどなにぶん海中なので、画像でご勘弁ください>>

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