其の名はT・Y
「世の中には知らないほうがいいこともある、だが知っておかなければならないことも沢山ある……」

「はぁ……?」

「軍部での通り名はアッシュハウンド、他にはグレイビースト、ワーキングニンジャ、ハンターJ、一つくらい聞いたことはないか」

艦長があげた名前、それはネットの上でまことしやかに囁かれるくだらない噂や、子供の頃に異口同音に語られた作り話、

そんな公式の場には決して出てこないが確実に何かしらの形で誰もが耳にした事のある「仕事人」の名前。

「闇から闇へ渡り歩く悪党を倒す始末屋」いわば都市伝説のようなものに登場するヒーローの名前だった。

「俺達は一定の階級からかならず教わることがある『T・Yには最大の敬意を払え、そして決して『闘うな』だ」

汗をぬぐいながらそう言う艦長の目には、畏怖と尊敬の弱弱しい光が宿っていた。

「それが今の通信の男だって言うんですか?ハッタリじゃないんですか?そもそもデビルを一人で操縦なんてできるわけが」

「あの男ができないわけがない」

そう言い放った艦長の目は真剣だった。

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