其の名はT・Y
「あの、何か御用でしょうか?それとももしや依頼ですか?」

背後から声をかけられた俺はキョドったね、そりゃもう去年彼女から「別れましょ」って言われた時以来の狼狽っぷり。

まあそれは置いといて、俺はそのオッサンに向き直って言ったわけだ。

「ぜぇ…ぜぇ…あの…はぁ……あ、ありがとうござい…はぁ…ました…」

言えてないっていうツッコミは却下。全力疾走後だ、息くらい切れるだろみんな。

「いえいえ、こちらこそ私のせいでご迷惑を」

「いや…ほんと…助かり…ました…はぁ…にしても、すごいですね」

息が整うまでもうちょっと聞き苦しいとは思うが勘弁な。

「いえいえ、荒事にはこう見えて慣れてますので」

平然と言ってのける目の前のオッサン。

どう見ても俺が一発殴ったら骨くらい折れそうな感じなんだけどな、ほんっと、ワケワカラン。

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