それでも君が好きだから
「…蓮クン、って知ってるわよね?」

「え?蓮…??」

コクンと頷くお母さん。

何が言いたいんだろう。





「知らない」





私は蓮なんて知らない。

誰それ?お母さんの友達?

お母さんは泣きそうな顔をする。

どうして…?

「やはり、沙羅さんは一部の記憶障害です」

「恋人の蓮クンだけ、忘れてしまったって事ですか?」

「その人を想い過ぎて、逆にその一部だけ無くなってしまった可能性があります」

「…思い、出せないのですか?」

「それは…」

「何?さっきから、何の話??」

私に分かんない話、しないでよ。

「沙羅、この部屋、男の人いるけど大丈夫?」

「は?何で男の心配してんの?」

「だって沙羅、男恐怖症じゃない」


「男恐怖症??何それ」

私が男嫌い?あり得ないっしょ。

「あの…」

「先生、どうして?」

「うーん、想い過ぎてしまってる記憶と、忘れ去りたい記憶…どちらの記憶も失ってしまったのでしょう」

「それじゃあ沙羅、桐谷クンの事も?」

「桐谷って誰?」

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