恋愛成長記
…友達と言っても他人なんだ。踏み込んで良い所とそうじゃない所がある…
「コラ。聞いてんのー?風歩」
「…朋代」
「ん?」
「好きの定義って何かな?」
何を想えば、人は人を好きになるんだろう?
好きって気持ちは、何が基準なんだろう?
真剣な顔でそう問い掛けると、暫く目をパチパチとしていた朋代が、ぶはっと吹き出した。


「なっ、何で笑うのー?!」
これでも私は真剣なのだ。思春期を女子校で過ごした私に恋なんて到底縁遠い話…。入学早々得体の知れない感情を抱いてしまった私は、本気で困っていると言うのに…

「や、ごめ…あんまり真剣に言うもんだから…」
…未だ笑い続けながら言葉を返す朋代。何だか腹立たしさを覚えながらも、私は彼女が落ち着くのを待つ。

「…どうしようもなくなったら、それが恋なんだと思う」
「え?」
「好きだ好きだ大好きだーって思って、何をしててもその人の事しか考えられなくてどうしようもなくなったら、恋なんだと思うよ?」
…私はね。
そう付け足して、朋代は笑った。

「一目惚れだって立派な恋だし、そもそも恋愛に定義なんかないよ。人それぞれでしょ」
判ったかな?真面目ちゃん。
ビタッと額が嫌な音を立てた。それが朋代のデコピンだと判るまでに数秒を要する。
痛みに悶絶していると、だからね、と朋代が続けた。
「焦らなくて良いんじゃない?氷室君ガード堅そうだし。今の所誰にも興味なさそうだし…フェチから始まる恋だってありだよ」
「だからっ!!!フェチじゃないってばっ!」

ニヤニヤする朋代に怒ったように声を上げると、一瞬クラスがシーン…となった。
それに気付いて恥ずかしくなって下を向くと、また朋代が笑った。
「~~~~っ」
怒りを声には出さずに顔を上げると、クラスはもう元通りのざわめきに満ちていた。ふと見渡した室内の一角でこちらを見ていたらしい氷室君と一瞬目があった。

「ぁ…」
「……」

本当に一瞬。
目が合った瞬間に逸らされてしまったけれど…

(………氷室君……)

この想いが何なのか…?
判った時私はどうするんだろう…

その時氷室君に、彼女はいるのかな…?

この先の不安と淡い期待を抱きながら、私は次の授業の予鈴を何処か遠くに聞いていた。
< 7 / 14 >

この作品をシェア

pagetop