恋愛成長記
「…えーと…」
頬をポリポリかく私の眼前には、自然が眩しい―――癒し系スポット、中庭が広がっている。
おかしいな…さっきまで体育館にいて…
「んと…バスケとバレーボールを見て…」
それで私が途中でトイレに行きたくなって、バスケ部が気に入ったらしい朋代を体育館に残して…そうそう…トイレを探してたはずなんだけど…
「何で中庭に出ちゃったの…私…」
方向音痴な自分を呪うよ…本当にもう…。
ガクリと首を落として、どうしたものかと溜め息を付く。ここまで来たのは良いが、どうやってここにたどり着いたかまでは記憶に無い。…故に迷子なわけだが…
広い校内。移動する際はいつも朋代が隣にいたので、道順を覚えようとした例がない。大体、本来2階にある体育館から階段を下って来るまでの何処にもトイレを見つけられないとはどういう事なのか…
(………携帯も教室だぁ……)
ゴソゴソとポケットを探るが、お目当てのものは見つからない。唯一の連絡手段だったソレは、今日に限って鞄の中に置いて来てしまった。
(朋代、心配してるかなぁ…)
バスケに夢中になって居た(球技が好きらしい)彼女は、下手したら空が薄らと暗くなるまで、自分の事に気付かないのではないだろうか。
すぐ戻ると思って声もかけないで来てしまった事に後悔しながら、もう一度、中庭を見つめた…