勉強会課題
第3回「夕焼けと対立感情」
――海が真っ赤だ


ボクが昔見ていた海に色はなかった。

透明で、透明で、どこまでも透明で。

空の青が、太陽の白が、夕焼けの赤がその透明な海に色をつけていた。


――海が真っ赤だ

近頃ボクが見ていた海に命はなかった。

奪われ、殺され、次々に滅んで。

遊ぶ小魚も、からかうタコも、揺れる昆布もその海にはいなくなった。


――海が真っ赤だ

さっきまでペコペコだったお腹はすっかりふくれた。

噛み、砕き、飲み込んで。

かわいらしい瞳も、立派なヒレも、脈打つ心臓も全て食べ尽くした。


――海が真っ赤だ。

キミはこの滅び行く海で最後に出会った僕の仲間。

泳ぎ、遊び、戯れて。

二匹で泳いだ昼も、空腹に嘆いた夜も、君が決意した朝もずっと忘れない。


――海が真っ赤だ

君の血に染まる海が、オレンジに塗りつぶされていく。


――海がオレンジ色だ

ボクの心の中を冷たい風が吹く。


――海がオレンジ色だ

ボクの空腹を愛する君が満たす。


――海がオレンジ色だ

ボクの心を失った君が満たす。


――海がオレンジ色だ

オレンジに押し出された赤がボクの心に入り込む。


――海がオレンジ色だ

ボクの体に真っ赤な血が巡る。


――目の前が真っ赤だ

絶対に許さない。

ボクらの海を奪ったやつを許さない。



――嗚呼、全てが真っ赤だ

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