<実話>それでもずっと、大好き。
何を考えてるんだこの男は…
と思いながら中に入り、なぜか保坂さんは私と拓也にケーキをご馳走してくれた。
また笑顔の仮面をつけて、母親とやり直したいんだと私たち相手に言ってきた。
母親に話そうとしても相手にされないから、まず私たちを丸め込もうと思ったのだろう。
私たち相手に言っても無駄なのに……
そう思いつつ保坂さんの機嫌を損ねないように、私たちは話を合わせていた。
そして私はトイレに行くと言って席を立ち、足早にトイレに向かった。
こっそりポケットに入れてたケータイを取り出して、母親にメールした。
自分で言うのもなんだけど、この時の私は頭が良かったと思う。
私が連絡したとバレないように、
私と拓也の帰りが遅いから、保坂さんに疑いをかけたという自然な方法で、
助けてほしいと母親に連絡したのだ。
すると母親はその通りにして、保坂さんに連絡してくれた。
保坂さんは意外とすんなりと家に帰してくれた。
帰ると母親は心配すると共に、
どうして学校に逃げ込まなかったのかと、説教してきた。
説教は聞き流していたが、
私と拓也の心には、元父親に誘拐されたという事実が、しっかりと傷をつけた。