<実話>それでもずっと、大好き。




 その日から藤井はまた、私を避け始めた。


藤井はわかりやすく避ける。

たとえば、

以前は1日に10回は目があっていたのに、今では1日に2回あるかどうかというほど。


 決定的だったのは、

授業が始まる前に藤井がトイレに行ったので、勇気を出してトイレに行くふりをして追いかけた。

トイレから出るタイミングがずれてしまい、藤井より少し後に出た。

案の定先に教室に入ろうとする藤井の後ろ姿を見つけて、走って戻ろうとした。

が、扉を開けた所で藤井が振り返り、目があったので話しかけようとしたら、

藤井はすぐ前を向いて、扉を閉めてしまった。


私がいるのを知ってるのに…?

でも距離があったし、冬だから扉は閉める決まりだし…

と言い聞かせた。


 だけど少し前なら……

藤井は優しいから、私が追いつくまで扉の前で待っていてくれた。

からかってくれた…。



なのに、私が教室に入っても藤井は、1度も私を見てくれなかった。



 少しでも、心が通じあえてた気がした。

少しでも、私を気にしてくれていると思ってた。






これは…


神様が何度も与えてくれたチャンスを、

無駄にしてしまった私への報いなの?

さっさと告白しなかった私がいけないの?

もう、仲良く話せないの?



…笠原の時と、同じなの…?




私はこれからどうしたらいいのかわからず、
途方に暮れた。




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