レヴィオルストーリー3
「もういい!下がりなさい。殺しはなしよ!!」
悪魔が叫び声ではない言葉をはじめて発した。
喋ったのはアレンを斬りつけた、艶やかな雰囲気を持つ女性。
「……何だ…?」
血の流れる傷口を押さえ、痛みに息を切らしアレンは眉を潜めた。
暗殺目的ではないなら何なのだ。
…ますますわからない。
「ディルネ様」
一人の男が女性の前に進み出た。
見覚えあるそいつにアレンは目を見張る。
「お前…!」
「…ふんっ。借りを返してやる」
勇者を睨み付け、悪魔が鼻息荒く言い捨てた。
…アレンに即位式典で強制転送された悪魔だ。
ディルネと呼ばれた女性は彼を見下ろし、不意に笑う。
「あぁ、ゲイン?」
「はい」
「…まぁいいわ。いい?殺しは、なし!」
「わかっています」
ニヤリと笑って振り返る悪魔――ゲイン。
彼を睨み、アレンは剣を握り直した。
「仕返しのためにここまでしたのか?」
「俺はな。他は違う」
「じゃあ何が目的なんだ」
「さあ?」
「…………………。」
――…むかつく。
ヒクヒク唇の端を吊り上げ、アレンは怒りを一生懸命鎮めた。