レヴィオルストーリー3
彼は腕時計を見ていた。

それに気付いたメディンも同じく時計を覗き込み、あ、と声を漏らす。



「もうこんな時間だ」

「…ほんとですね。話しすぎました」

「そろそろ就任式の準備がはじまるだろ。行ってこい」


どうやらメディンがお暇しなければいけないらしい。


側近は少し残念そうにした後、必ず遊びに来てくださいよと変な念を押した。

言われなくても、とおおらかに笑って答えたウィスカは、ヒラヒラと手を振り彼を急かす。


が、自分を支えてきてくれた側近がある程度離れたところで、その名を呼び彼を引き止めた。

不思議そうに自分を見るその人に苦笑しつつ、最後にはとびきりの笑顔でこう言う。



「10年間、ありがとう」

「!」



その柔らかな微笑と声色に、メディンは目を見開いた。

それからふと目を細め、口許で弧を描くと頷く。



「私も、貴方様にお仕えできて本当によかったです」

「うん。お前は最高のパートナーだった」

「ふふ、光栄です」


お幸せに、そう言ってメディンは優雅に礼をした。

立ち上がったウィスカも頷いて笑う。


その笑顔を確認したメディンは、嬉しそうに目を細めると再度踵を返した。


遠くなっていくその背中を、42代目勇者は黙って見送る。






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