レヴィオルストーリー3
30.真実
走って走って、そして、そこに辿り着いた。
未来で自分も就任式を実行したバルコニーの真下に、それはいた。
──…黒。
ひたすら黒い、目だけが赤いそれ。
それから少し離れたところに、43代目らしき勇者の格好をした男が倒れている。
「クルーズ…」
ルティがぼそりと呟く。
クルーズ=ジェイラス、それが記録に残っている43代目の名前。
「…人がたくさん…」
状況は最悪なものだった。
それ──魔王の背後に、人質にされているのだろう兵士達と国民が数人。
逆に正面には、魔王から半径10メートル以内を除いて人が大勢地に伏せていた。
きっと吹き飛ばすなどしたのだろう。
「くそ…わかってても何も出来ないのは辛いな」
「……………………。」
歯軋りするルティ。
アレンは鋭い目で辺りを見渡す。
そして最後に、魔王のその赤い瞳を睨んだ。
〈来たか…〉
かつて人だったそれが、口を開く。
地に響く低い声。
アレンが魔王をはじめて見たときの、口元を隠す黒がなかった。
そして、魔王がそう言ってしばらくして、その場に透明な光と魔方陣が現れる。