大好きだよ。
大好きだよ。
 
 気づいたら、彼女が泣いていた。
 何度も何度も何度も、俺の名前を呼びながら、泣いていた。

「もうやめろよっ」

 そう叫ぶけど、彼女の耳には届かない。
 彼女はまた俺を呼ぶ。
 俺はもう、その言葉に応えることはできないのに。

「はるか」

 俺じゃないやつが、彼女の名を呼んだ。
 俺じゃないやつが、彼女に寄り添って肩を抱く。

「人の女に触ってんじゃねぇよ」

 そう叫びたかったけど、飲み込んだ。
 どうせ誰にも届かない。
 代わりに、呑気に笑って額縁に収まっているバカな男を睨み付けた。
 なんでお前笑ってるんだよ。彼女が泣いてるのに、他の男に触られてるのに、なんで、そんなところにいるんだよ。

「何で死んでんだよ、俺……」
< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop