異風人
「お帰りなさいませ」と、小夜は吉平のコートを肩から外しながら、何時ものように、敬意の念を装った。
「伊沙子はどうした?」
「奥様は外出しております。大学時代の同窓会とかで、遅くなるそうです」
「今日も外出かね」と呟きながら吉平は、応接間のソファに深々と腰を下ろした。小夜はコーヒを運びそそくさと立ち去ろうとした。
「小夜!」
「はい、何でしょうご主人様」
「ここへ座りなさい」
「今日はどんなお話でしょう」と、小夜は、何時ものように、つくろいながら座った。
「くそ親父といわれたよ」
「まぁ、失礼ですわね」
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