異風人
「そうにきまっとる」と、吉平は、きっぱりと言い切った。
 小夜は、吉平の影響を受け、田中さんは、小夜の影響を受ける。従って、田中さんの格調高い人格は養われる。きっぱり言い切った吉平の言葉には、そのような臭いが漂っていた。私と付き合えば、格調高い波紋が広がるのかと、吉平は、膝を叩いたのである。教育の原点はここにあるのかと、吉平は吉平なりに悟りを開いたのである。その内、この波紋は、田中さんが広げ、やがて世間全般に波及するのである。最初の波紋を起こした石は、自分自身であると吉平は考えた。いや、大学教授としては、そうしなければならないと、車中で負った深手を拭い去る手立てとして、更に強い義務感が芽生えたのである。
「小夜!」
「はい」
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