Night Walker
君の名は……
「取り敢えず、連れ帰るか……あ――玲子に電話しなきゃな……こんな時間に連絡したら怒るだろうなぁ……あいつ」
『はぁ……』
月に向かって付く溜め息が、彼の苦難をしらしめているようで、何処かもの悲しく聞こえた。
まだ、夜も明けきらない午前5時。
玲子は親戚であり、雇い主でもある津那魅に、つかみ掛かろうとする勢いで、睨み付けていた。
「今、何時だと思ってんのよ。4時頃に起こされて服持ってこいって何? その上、あんたの部屋の美少女。あんな女の子にまで手を出した訳? あんたは」
「誤解だって、そういうんじゃ無い」
「じゃあ何なのよ。説明なさいよ」
津那魅に負けず劣らずの迫力系美女。
年齢的にはさほどかわらない様に見える。
その彼女が力一杯凄む。
我等が、粛正者も玲子にかかれば形無しだった。
「ふうん……吸血鬼の花嫁ねぇ……。彼女、何処の子なの」
一部始終を伝え終えた津那魅に、玲子は彼女の仕事場の一番豪奢な机の重役椅子に、身体を預ける様に腰掛け、脚を組んで呟いた。
此処は津那魅の住宅兼仕事場。
一階は仕事場、二、三階は津那魅の住居となっている小さなビルだ。
小さな下町の商店街に毛が生えた程度の中心部。
その隅っこに位置する、小さな雑居ビルの様な、煉瓦で外壁を装飾しているビル。
此処が津那魅の城だった。
「仕事になるんなら良いけど……」
玲子が、脚を組み替えつつ側に立つ津那魅を睨みつけた。
「ただ働きじゃあ無いでしょうね」
だったら承知しないわよと凄んで言う玲子に、津那魅はいちべつして二階に上がるドアを見つめて答える。
「さあて……私はあの子の名前すら、知らないからなぁ。全てはあの子が目覚めてからだな」
「まぁ、何にも始まらないのは確かだけど……その子も因果なものね。吸血鬼に好かれる血だなんて……」
同情の色濃く吐き出される溜め息は、狙われた少女を思っての溜め息。
意外と優しい気持ちも持つ女だったりする。
津那魅は、そんな玲子を見て微笑むと、
「紅茶でも飲むかい?」
と言って立ち上がった。
『はぁ……』
月に向かって付く溜め息が、彼の苦難をしらしめているようで、何処かもの悲しく聞こえた。
まだ、夜も明けきらない午前5時。
玲子は親戚であり、雇い主でもある津那魅に、つかみ掛かろうとする勢いで、睨み付けていた。
「今、何時だと思ってんのよ。4時頃に起こされて服持ってこいって何? その上、あんたの部屋の美少女。あんな女の子にまで手を出した訳? あんたは」
「誤解だって、そういうんじゃ無い」
「じゃあ何なのよ。説明なさいよ」
津那魅に負けず劣らずの迫力系美女。
年齢的にはさほどかわらない様に見える。
その彼女が力一杯凄む。
我等が、粛正者も玲子にかかれば形無しだった。
「ふうん……吸血鬼の花嫁ねぇ……。彼女、何処の子なの」
一部始終を伝え終えた津那魅に、玲子は彼女の仕事場の一番豪奢な机の重役椅子に、身体を預ける様に腰掛け、脚を組んで呟いた。
此処は津那魅の住宅兼仕事場。
一階は仕事場、二、三階は津那魅の住居となっている小さなビルだ。
小さな下町の商店街に毛が生えた程度の中心部。
その隅っこに位置する、小さな雑居ビルの様な、煉瓦で外壁を装飾しているビル。
此処が津那魅の城だった。
「仕事になるんなら良いけど……」
玲子が、脚を組み替えつつ側に立つ津那魅を睨みつけた。
「ただ働きじゃあ無いでしょうね」
だったら承知しないわよと凄んで言う玲子に、津那魅はいちべつして二階に上がるドアを見つめて答える。
「さあて……私はあの子の名前すら、知らないからなぁ。全てはあの子が目覚めてからだな」
「まぁ、何にも始まらないのは確かだけど……その子も因果なものね。吸血鬼に好かれる血だなんて……」
同情の色濃く吐き出される溜め息は、狙われた少女を思っての溜め息。
意外と優しい気持ちも持つ女だったりする。
津那魅は、そんな玲子を見て微笑むと、
「紅茶でも飲むかい?」
と言って立ち上がった。