Night Walker
目の当たりにする津那魅の力。

舞は、その様子をポカンと見つつ、津那魅が本当に人では無い事を改めて実感した。

そして津那魅が、ソファーの一人掛けに腰を降ろした頃には、仁は女二人の前にデカイ態度で座っていた。


「サンキューつーちゃん。扉、悪いね。なーなー。それよりさぁ……、無茶苦茶可愛い女の子がいるんだけど……何処で引っ掛けてきたん? めっちゃオレ好みのタイプなんすけど!?」

「あのですね、仁。悪いと思ってるのなら、もう少し考えて行動して下さい。それにその口の聞き方、何とかしなさいと、あれ程言っているのに君は……。彼女に失礼だとは、思わないのですか?」


急に話題が自分の事になり、舞は驚いて困惑した。

津那魅は、舞と仁を交互に観察すると、


「お前の現れ方が奇抜なせいで、彼女が驚いているではないですか。それに私は彼女を引っ掛けてはいませんので、悪しからず」


そう言って最後に舞に視線を留め、「申し訳ありませんね。私からも、よく言い聞かせておきますから」と笑って見せた。

舞は、少しぎこちない微笑みを見せると、首を左右に振った。

新たに現れた人物に、驚かなかったとは言わない。

だが、何故か親しみのある雰囲気をかもし出す仁を、舞は悪印象で見る事は出来なかった。


『変わった人……でも、悪い人ではなさそう……』


何と無くだったのだろう。

じっと仁を見ていた舞に、彼は突然自己紹介をしはじめた。


「俺は三枝 仁(さえぐさ じん)『東都新聞』でルボライターをしてんだ。んでさ、あんたも津那魅に拾われたん?」

「拾……」

「仁。わざわざ、ここまでくだを巻に来た訳では無いのでしょう。用件をさっさと言ったらどうです」


冷たい声音で津那魅に言われ、仁は肩を竦めると、本題に入った。


「実はな、財布取られたんよ。有り金全部入っててな、電車乗る金も無いねん」


そこで仁は目の前で津那魅に向かって拝む様に手を合わせると、「ってな訳でお金貸して」と哀願した。


津那魅は、ソファーに深く沈み込むと大きく息を吐いた。


「またですか……これで何度目です?」


ひの、ふの、み、と指折り数えて天を仰いでから、仁は津那魅を見た。
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