Night Walker
医者が、潮時を察知してふざけた態度を改める。
それが分かる程に、場の空気がピンと張りつめる。
医者のへらっとした顔付きが引き締まった。
その表情は、医者一個人ではなく、吸血鬼の長としての顔だった。
「津那魅君。我等にとって、花嫁と呼ばれる存在は、特別な存在なのだよ。花嫁、花婿。我等がそう呼ぶ存在の多くは、呼び名の通り、大抵は我々と同じ存在となり、隣に付き従う。決して食事の対象ではない」
いつになく饒舌に語る医者に津那魅は、眉をしかめる事で己の心情を表した。
「お前と、お前の一族はそうかも知れない。が、しかしだ、奴のそれは明らかに違う。お前達にも、善良者とそうで無い者とが居るのだろう」
デスクにもたれ掛かり、ボールペンを手持ちぶたさにいじりながら、話していた津那魅の手が止まり、医者をねめつける。
「私も、お前の事は買っているんだよ。吸血鬼」
上から目線で振られる言葉に、医者は肩を竦める。
「津那魅君には負けるよ。私が知る事など無いに等しいが、分かった事があれば知らせよう。それでどうだい?」
医者の提案に、津那魅は彼から得る情報は無いと判断し、うなづいた。
「奴はお前の下に現れると思うか?」
「来なければ、君の粛正の前に我等一族に追われる事になる。彼も愚か者では無かろう。その事は、彼の使用人にも伝えてある」
医者は、津那魅の問い掛けに、そつなく答えた。
「なるほどね。危険な芽は前もって摘むに越したことは無い……って訳ね……」
「まぁ……しいて言えばそんな所だ」
医者の悪びれない言い草に、津那魅は息を付くと、
『ほんと、食えない奴だな』
と、ひっそり一人呟いた。
「あぁ! そう言えば、あの男の使用人、あれは奴の女だぞ」
ふと、思い出したように呟く医者に、津那魅は思わず、
「はぁあ?」
と、素っ頓狂な声を上げる。
「確実にそうだ。間違いない」
力一杯、うなづく医者に胡散臭そうな視線が突き刺さる。
医者は更なる確証を、津那魅に突き付ける。
「我等は、人間を簡単には仲間にしない。何故なら人は、あくまでも我々にとって、食料でしか無いからだ」
それが分かる程に、場の空気がピンと張りつめる。
医者のへらっとした顔付きが引き締まった。
その表情は、医者一個人ではなく、吸血鬼の長としての顔だった。
「津那魅君。我等にとって、花嫁と呼ばれる存在は、特別な存在なのだよ。花嫁、花婿。我等がそう呼ぶ存在の多くは、呼び名の通り、大抵は我々と同じ存在となり、隣に付き従う。決して食事の対象ではない」
いつになく饒舌に語る医者に津那魅は、眉をしかめる事で己の心情を表した。
「お前と、お前の一族はそうかも知れない。が、しかしだ、奴のそれは明らかに違う。お前達にも、善良者とそうで無い者とが居るのだろう」
デスクにもたれ掛かり、ボールペンを手持ちぶたさにいじりながら、話していた津那魅の手が止まり、医者をねめつける。
「私も、お前の事は買っているんだよ。吸血鬼」
上から目線で振られる言葉に、医者は肩を竦める。
「津那魅君には負けるよ。私が知る事など無いに等しいが、分かった事があれば知らせよう。それでどうだい?」
医者の提案に、津那魅は彼から得る情報は無いと判断し、うなづいた。
「奴はお前の下に現れると思うか?」
「来なければ、君の粛正の前に我等一族に追われる事になる。彼も愚か者では無かろう。その事は、彼の使用人にも伝えてある」
医者は、津那魅の問い掛けに、そつなく答えた。
「なるほどね。危険な芽は前もって摘むに越したことは無い……って訳ね……」
「まぁ……しいて言えばそんな所だ」
医者の悪びれない言い草に、津那魅は息を付くと、
『ほんと、食えない奴だな』
と、ひっそり一人呟いた。
「あぁ! そう言えば、あの男の使用人、あれは奴の女だぞ」
ふと、思い出したように呟く医者に、津那魅は思わず、
「はぁあ?」
と、素っ頓狂な声を上げる。
「確実にそうだ。間違いない」
力一杯、うなづく医者に胡散臭そうな視線が突き刺さる。
医者は更なる確証を、津那魅に突き付ける。
「我等は、人間を簡単には仲間にしない。何故なら人は、あくまでも我々にとって、食料でしか無いからだ」