Night Walker
「食料……ねぇ。私の前で吐く言葉では無いね。自重しろよ」
そう言って睨みつける津那魅に、ドラクは肩を竦める事で応える。
目線をドラクから外し、踵を返して部屋を出ようとする津那魅に、彼は不思議そうな声音で、問い掛けた。
「何処へ行くんです? 津那魅君」
ドアノブに手を掛けたまま、振り返った津那魅が、ドラクをひと睨みして面倒臭そうに吐き捨てる。
「嫉妬に狂う女の始末だ。奴に同族の女が居るのなら、真っ先に命を狙われるのは舞だ」
「成る程、人を害する者は、裁かなければならない訳ですね。ならば、これを持って行くと良い」
ドラクが投げて寄越した物を、津那魅は咄嗟に左手で受け止めた。
それは、黒い柄の付いた銀色の鍵。
「何のつもりだ?」
「ただの、親切心ですよ」
「信じられんな。見返りは何だ?」
「またまた……そんなもの有りませんよ」
ドラクの悪びれない言葉と顔に、津那魅はわずかに躊躇いを見せたが、目を閉じて一呼吸おくと、
「なら、遠慮無く借りて行く」
「物は地下の医院専用駐車場です。赤いフェラーリが私のですから……」
そう言われて、思わず鍵に視線を落とす。
確かに、通常より少し大きめの鍵は、国産では無いと主張している。
「言っておくが、私は国産車専門だぞ。ぶつけない保証は無い」
「ハッキリ言うねぇ……なら次は、粛正者でない君に逢わせてくれると言うのなら、好きに扱ってくれて良いよ」
「断る。それなら、必ず無傷で返すまで……」
「おや、残念」
ニヤリと笑う津那魅に、ドラクは彼と同じ様に笑い返して、津那魅を送り出した。
暫くして、ドラクの耳に、愛車のエンジンの爆音が、聞こえて来た。
書類から目線を外し、遠ざかる音を捉えたまま、此処に居ない彼を思う。
「健闘を祈りますよ。津那魅君。さて、新入り君はどうなさるお積りなのでしょうねぇ……」
意味深にドアに視線を移し、聞こえる様に言葉を吐く。
聞こえていたのか、いないのか。
よくは解らなかったが、まるで合図があったかの様に、ゆっくりとドアが音をたてて開いた。
そう言って睨みつける津那魅に、ドラクは肩を竦める事で応える。
目線をドラクから外し、踵を返して部屋を出ようとする津那魅に、彼は不思議そうな声音で、問い掛けた。
「何処へ行くんです? 津那魅君」
ドアノブに手を掛けたまま、振り返った津那魅が、ドラクをひと睨みして面倒臭そうに吐き捨てる。
「嫉妬に狂う女の始末だ。奴に同族の女が居るのなら、真っ先に命を狙われるのは舞だ」
「成る程、人を害する者は、裁かなければならない訳ですね。ならば、これを持って行くと良い」
ドラクが投げて寄越した物を、津那魅は咄嗟に左手で受け止めた。
それは、黒い柄の付いた銀色の鍵。
「何のつもりだ?」
「ただの、親切心ですよ」
「信じられんな。見返りは何だ?」
「またまた……そんなもの有りませんよ」
ドラクの悪びれない言葉と顔に、津那魅はわずかに躊躇いを見せたが、目を閉じて一呼吸おくと、
「なら、遠慮無く借りて行く」
「物は地下の医院専用駐車場です。赤いフェラーリが私のですから……」
そう言われて、思わず鍵に視線を落とす。
確かに、通常より少し大きめの鍵は、国産では無いと主張している。
「言っておくが、私は国産車専門だぞ。ぶつけない保証は無い」
「ハッキリ言うねぇ……なら次は、粛正者でない君に逢わせてくれると言うのなら、好きに扱ってくれて良いよ」
「断る。それなら、必ず無傷で返すまで……」
「おや、残念」
ニヤリと笑う津那魅に、ドラクは彼と同じ様に笑い返して、津那魅を送り出した。
暫くして、ドラクの耳に、愛車のエンジンの爆音が、聞こえて来た。
書類から目線を外し、遠ざかる音を捉えたまま、此処に居ない彼を思う。
「健闘を祈りますよ。津那魅君。さて、新入り君はどうなさるお積りなのでしょうねぇ……」
意味深にドアに視線を移し、聞こえる様に言葉を吐く。
聞こえていたのか、いないのか。
よくは解らなかったが、まるで合図があったかの様に、ゆっくりとドアが音をたてて開いた。