Night Walker
「やあ。漸く来たね、新入り君」


姿を現した、金髪の若い男。

と、言っても若く見えるのは、見た目だけ。

吸血鬼は簡単には死なない。

歳をとる事も無い。

よって、彼は見た目通りでは無い。

勿論、ドラク自身も。


「お初にお目にかかります。ご挨拶が遅れました事、深くお詫び申し上げます」

「あぁ、そのようだね。君の事は、先に挨拶に来た者から聞いているよ」


にこやかに笑うドラクは、手を上げて横にある椅子を勧める。

男は勧められた椅子に身体を預けると、唐突に本題に入った。


「さっきいたのは、私の花嫁を連れ去った男ですよね?」

「それが、何か?」

「付き合う相手は選んだ方が良いと思いますよ。ドクター?」


はて、と首を傾げるドラク。

男は、嘲る様に唇の端を上げて笑った。

だが、ドラクは相手になろうとしない。


『私を挑発しようとしているみたいだが……まだまだ子供だなぁ……嘗められていると言う進言も、あながち間違いでは無いと言う事か』


「津那魅君は、この帝都に住む我々の、よき理解者だからね。付き合いは止めないよ。君こそ、彼に逆らわない方が良いね」

「はっ! 貴方もお歳を召した訳ですか。ドラキュラ伯爵ともあろう方が、あんな若僧相手に媚びを売るとは」

「若僧? 君は彼をそんな風に見たのかい?」


驚いたふうに見せるドラクのわざとらしさに、津那魅なら閉口して肩を竦めるのだろうが、この青年、付き合いの無さに、ドラクの腹の中すら探れない。

見たままに読み取って、


「何か間違いでも?」


と、問い直す。

そんな彼の問い掛けをあっさりと無視して、


「君、歳いくつ?」


と、ちぐはぐな質問を口にして、ドラクはじっと青年を見た。

緋色の瞳が一層赤く濁り、青年をい抜く。

吸血鬼の瞳には力がある。

特に、ドラクの正体はドラキュラ。

青年ですら抗えない。

そんなドラクの瞳にも、微動だにしない津那魅は、彼から見ても『脅威』以外の何物でも無い。


『そんな津那魅君の真、の強さも計れないとは、こいつ長く無いな……』
< 34 / 42 >

この作品をシェア

pagetop