Night Walker
厳しい眼差しで、青年を値踏みしたドラクは、彼に興味を無くしたのか、
「まあ、どうでも良い事だか……」
そう小さく呟いて、溜め息をついた。
そんなドラクの心情の呟きが、聞こえたのか否か、青年が彼に問うた。
「ドクター、何か含みのある物言いですね。一体何を隠しているのです?」
「隠す?」
いぶかしむドラクの声音に、青年は意外な事に首を傾げる。
「何かご存知なのでしょう? 私の歳まで聞き出そうとして。それこそ、何か無ければ、どうでもいい事な訳でしょう? 我らには、時の流れなぞ関係ないのだから……」
青年の目が眇られ、ドラクの腹を探ろうと画策する。
彼も若いとはいえ、人より永く生きているだけはあった。
「若いって、無謀だねぇと、思ってね」
ドラクが、半分呆れ返る様に言葉を紡ぎ、青年は、言われた言葉の裏に有る、意味を読み取れず、首を傾げたまま、ドラクの次の言葉を待つ。
だが、ドラクは何も言わない。
言葉を発しないまま、診察室の窓辺に移動し、そこから外の風景を眺め始めた。
暫くドラクの様子を見ていた青年は、彼の態度が変わらない事に溜め息を付き、ソファーから立ち上がった。
「『教える事など何も無い』と、言う訳ですね、ドクター。ならば此処に居ても仕方が無い。おいとますると、いたしましょう」
立ち上がると踵を返し、ドアまで歩く青年の背中に、ドラクがふと、気まぐれに呼びかける。
「人間を花嫁にするのは諦めろ。お前の言う『花嫁』は、本来の意味では無かろう?」
振って来た言葉に、青年が不快感を示し、眉をしかめる。
「貴方に何の関係が有る?」
「確かに……私には何の関係も無いね。ただ、この国のバンパイアの長として、老婆心からの忠告をと思ってね。目上の者の言葉には、耳を傾けるのが得策だと思うがね」
肩を竦めてみせるドラクには、確かに老婆心なのか含みのある表情で、青年をじっと見ていた。
青年が、ふっと笑む。
極上とも言われている吸血鬼の微笑。
そんな魔物の妖しい笑みを湛え青年は高すぎる矜持(きょうじ)でもってドラクに言い切った。
「まあ、どうでも良い事だか……」
そう小さく呟いて、溜め息をついた。
そんなドラクの心情の呟きが、聞こえたのか否か、青年が彼に問うた。
「ドクター、何か含みのある物言いですね。一体何を隠しているのです?」
「隠す?」
いぶかしむドラクの声音に、青年は意外な事に首を傾げる。
「何かご存知なのでしょう? 私の歳まで聞き出そうとして。それこそ、何か無ければ、どうでもいい事な訳でしょう? 我らには、時の流れなぞ関係ないのだから……」
青年の目が眇られ、ドラクの腹を探ろうと画策する。
彼も若いとはいえ、人より永く生きているだけはあった。
「若いって、無謀だねぇと、思ってね」
ドラクが、半分呆れ返る様に言葉を紡ぎ、青年は、言われた言葉の裏に有る、意味を読み取れず、首を傾げたまま、ドラクの次の言葉を待つ。
だが、ドラクは何も言わない。
言葉を発しないまま、診察室の窓辺に移動し、そこから外の風景を眺め始めた。
暫くドラクの様子を見ていた青年は、彼の態度が変わらない事に溜め息を付き、ソファーから立ち上がった。
「『教える事など何も無い』と、言う訳ですね、ドクター。ならば此処に居ても仕方が無い。おいとますると、いたしましょう」
立ち上がると踵を返し、ドアまで歩く青年の背中に、ドラクがふと、気まぐれに呼びかける。
「人間を花嫁にするのは諦めろ。お前の言う『花嫁』は、本来の意味では無かろう?」
振って来た言葉に、青年が不快感を示し、眉をしかめる。
「貴方に何の関係が有る?」
「確かに……私には何の関係も無いね。ただ、この国のバンパイアの長として、老婆心からの忠告をと思ってね。目上の者の言葉には、耳を傾けるのが得策だと思うがね」
肩を竦めてみせるドラクには、確かに老婆心なのか含みのある表情で、青年をじっと見ていた。
青年が、ふっと笑む。
極上とも言われている吸血鬼の微笑。
そんな魔物の妖しい笑みを湛え青年は高すぎる矜持(きょうじ)でもってドラクに言い切った。